« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009年3月

2009.03.10

請願再び、あるいは背任罪の成否

役所の仕事は年度単位で行われますから、来たる4月1日から新たに、財団法人福島県職員共助会の事務に県の職員を従事させ、あるいは、財団法人福島県職員共助会に対して県の施設の目的外使用許可をした上で福利厚生を理由にその使用料を減免する可能性があります。
しかし、このブログで縷々述べてきたように、同財団は県の条例を根拠とする職員の互助団体とは認めがたいため、そのような行為は、法的根拠に欠け、不当に人件費相当分あるいは使用料相当分の財産的損害を県に与えることになります。その理屈はあまりにも常識的ですから、それを認識しながらあえて平成21年度もそのような行為を行った場合には、担当した県の職員について刑法上の背任罪が成立する可能性すらあるでしょう。その理は、業務命令により事務を行ったとしても同じです(違法な業務命令に従う義務はない)。

 (背任)
第247条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
※「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」については、確定的認識までは要せず、未必的認識で足りると解されています。

違法性を再認識していただく意味もあり、次の内容の請願書を提出することにしました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  福島県知事 様

 憲法第16条及び請願法の規定に基づき、下記のとおり請願します。

  平成21年3月  日
                                                                                                                                          住所 ○○○○
                                              氏名 ○○○○

                                        記
1 請願の趣旨

 福島県(以下「県」)がその職員を財団法人福島県職員共助会(以下「共助会」)の事務に従事させること、及び県が共助会に対して県の行政財産の目的外使用許可をした上でその使用料を減免することは、法的根拠がなく、不当に人件費相当分及び使用料相当分の財産上の損害を県に与えることになるので、そのような行為について、現年度については即刻止めること、及び次年度以降については一切行わないこと。

2 請願の理由

 平成20年8月6日付けで県に提出した請願書に詳述したが、次の理由から、共助会は福島県職員の互助団体に関する条例(以下「互助団体条例」)を根拠とする職員の互助団体とは認めがたいこと。
(1)  共助会は互助団体条例第4条第1項の設立の承認を受けていない(当該承認を得た団体であることを直接又は間接に推認することができる文書が存在しない)。
(2) 共助会は財団法人であることから、互助団体条例第2条第1項の職員が組織する団体ではありえない(法律の常識的な解釈)。
(3) 互助団体条例は、第2条第2項で職員の強制加入を前提としているが、そのような内容を条例で規定することは現行の法秩序の下では到底あり得ず、そのような規定を前提とする互助団体条例自体が不合理かつ無意味な条例である(法律の常識的な解釈)。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

|

2009.03.07

閑話(その11)

また興味ぶかい判決が出ました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
西宮市長に7千万返還請求命令 互助会公金流用 地裁判決 

 西宮市の職員互助会「自治振興会」が福利厚生事業費として支出された補助金などを不正に流用したのは違法として、市民団体「市民オンブズ西宮」(折口晴夫代表)のメンバー八人が山田知市長に対し、約十二億二千万円の返還を同振興会に請求するよう求めた住民訴訟の判決が六日、神戸地裁であった。佐藤明裁判長は、特別弔慰金や銀婚祝い金など計約七千百万円を「社会通念上許されない」とし、返還を求めるように命じた。
判決によると、同振興会は一九八三年に職員の福利厚生を目的に設立。西宮市からの毎年約一億円の補助金や職員の掛け金を財源にしてきた。
返還請求は十二億二千万円に上ったが、佐藤裁判長は、返還請求権の時効が成立していない二〇〇〇-〇三年度分の各給付で、監査請求を経たものについて検討。会員が死亡したときの特別弔慰金(百万円)や、退職時の退会せん別金(六十万-七十万円)、永年会員祝い金(約七万五千円)など六種類について「死亡退職や退職金の上乗せ支給にほかならない」と判断した。
 山田市長は「判決内容を精査した上で対応を検討したい」とコメントした。同振興会は〇五年度に制度を改め、退会せん別金と永年会員祝い金の公費負担を廃止した。
自治体の職員互助会への公費補助をめぐっては、昨年十一月にも同地裁が、高砂市長に対し、職員互助会に支出した約六億七千万円の返還を求めるよう言い渡した。
                                                                                (神戸新聞NEWS 3/6 22:46)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

さしあたっての関心は「返還請求権の時効が成立していない二〇〇〇-〇三年度分の各給付」の部分です。補助金の返還債務の時効は地方自治法の規定を適用して5年とする考え方と一般債権として10年とする考え方(私はこちらを支持)がありますが、どちらによったのでしょうか。訴えの提起により時効は中断しますから、この記事だけからは判断できません。そのうち、判決書の原文で確認してみます。
なお、西宮市の互助会に関する条例は次のとおりで、互助団体そのものではなく福利厚生事業について定めるスタンスがちょっと異色。その結果、職員自治振興会については事業の実施主体としてのみ言及されています。多くの都道府県の条例が互助組織の設立をストレートに規定している“おかしさ”とは無縁で、筋がとおっているともいえるでしょう。

   西宮市職員の福利厚生に関する条例

(趣旨)
第1条 この条例は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)の精神にのつとり、本市職員の福祉の増進を図るため、福利厚生事業の実施について必要な事項を定めるものとする。
(事業)
第2条 福利厚生事業は、福利厚生に関する資金の給付および貸付その他の事業とする。
(実施)
第3条 福利厚生事業は、本市職員のうち、地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)に基づき設立された兵庫県市町村職員共済組合の組合員を対象に行う。[1]
2 福利厚生事業は、財団法人西宮市職員自治振興会(以下「職員自治振興会」という。)において実施する。
(経費)
第4条 福利厚生事業の経費は、職員自治振興会規則で定める掛金、規則で定める市負担金、補助金その他の職員自治振興会の収入をもつて充てる。
(監督)
第5条 市長は、福利厚生事業に関し職員自治振興会の業務を監督し、必要な報告を求めることができる。
(便宜の供与)
第6条 市長は、職員自治振興会の運営に必要な範囲において、職員をその業務に従事させることができる。
2 市長は、職員自治振興会の運営に必要な範囲において、市が管理する土地建物その他の施設を無償で利用させることができる。
(委任)
第7条 この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
付 則
(施行期日)
第1条 この条例は、公布の日から施行する。
(西宮市職員共済会条例の廃止等)
第2条 西宮市職員共済会条例(昭和29年西宮市条例第37号)は、廃止する。
2 この条例の施行の際、現に前項の規定による廃止前の西宮市職員共済会条例(以下「旧条例」という。)に基づく年金給付を受けている者およびその遺族については、旧条例第3章の規定は、この条例の施行後も、なおその効力を有する。
3 この条例の施行後における旧条例に基づく年金給付は、職員自治振興会において行う。
付 則(平成20年3月27日西宮市条例第36号[1]西宮市職員の福利厚生に関する条例及び西宮市一般職員の給与に関する条例の一部を改正する条例1条による改正付則)
 この条例は、平成20年4月1日から施行する。

|

2009.03.03

閑話(その10)

今日見つけた記事です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「裏金として費消」指摘 宮城県警報償費返還訴訟

 仙台地裁の判決で不正支出の疑いを指摘された宮城県警の2000年度犯罪捜査報償費の返還を求めないのは不当だと、仙台市民オンブズマンが県警側から約85万円を返させるよう村井嘉浩知事に求めた訴訟の判決で、地裁は2日、監査請求期限の超過を理由に訴えを却下する一方で、「相当部分が裏金として費消された可能性が高い」と認定した。
 監査請求の対象となった2000年度の鉄道警察隊と旧生活保安課の報償費支出が、1年以内の監査請求期限が適用される財務会計上の行為に当たるのか、期限のないその他の行為に該当するのかが争点となった。
 畑一郎裁判長は「隊長、課長の決裁から支出までの一連の行為は、財務会計上の行為に当たる」と指摘。訴訟の前提となる監査請求が1年の期限後に行われたため、訴えは不適法と判断した。
 その上で、畑裁判長は報償費の使途について(1)不自然な使い切りがあり、犯罪発生との相関関係もない(2)元警視の内部告発があった(3)別の報償費訴訟で浅野史郎前知事が不正執行の疑念を証言した―など、オンブズマンが示した証拠に基づき、裏金に回った疑いがあるとの見解を示した。
 内部告発については、証拠や告発文書の内容から「当時の生保課長が作成したと認められる」と述べ、裏金の疑いに言及する支えの一つにした。
 判決によると、オンブズマンが県警の元会計課長に2000年度報償費の返還を求めた訴訟で、地裁は05年、「支出の相当部分に実体がなかった疑いが強い」と指摘。判決は確定したが、県は県警側に返還請求しなかった。
 県警の報償費をめぐり、地裁は昨年3月、1999年度分の情報公開訴訟の判決で不正支出を初めて認定。05年の地裁判決のほか、今年1月の仙台高裁判決も請求を棄却する一方で、不正の疑いに言及した。
 判決について、オンブズマンは「訴えの却下には承服できず、控訴の方向で検討する」と述べ、県警訟務室は「却下は当然だが、不正支出の疑念が示された点は極めて遺憾だ」とコメントした。
                                                   (KoL net 河北新報 2009年03月03日火曜日)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

財団法人福島県職員共助会に対する過去の違法な(と私が考える)補助金支出は平成18年度限りで終わっているようですから、この判決の考え方を前提にすると、住民監査請求・住民訴訟の途も閉ざされることになります。おそらく、県当局でもそのように考えて何もしない意思でしょうね。それはそれで合理的な対応だと思います。
もっとも、依然として県の職員を違法に(と私が考える)同財団の事務に従事させたり、また、県の施設を違法に(と私が考える)同財団に使用させているとすれば、それらは当然不当利得として県が返還請求しうる債権と構成可能でしょうから、今後仮に法的手段に訴えるとすれば、こちらから攻めることになるのでしょうね。

【参考法令】地方自治法
 (住民監査請求)
第二百四十二条 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填てんするために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3~9 (略)
 (住民訴訟)
第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求
2~12 (略)

|

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »